【rain&ruin】 self review

リリースから一年【rain&ruin】の全貌が今(更)明かされる!

 

2013年9月15日、町田beat box cafeにて行われた【rain&ruin】レコ発単独公演「古い映画と、指輪と、歌と、」から丸一年。

2枚組18曲(19曲と云う噂も)収録と云う、どインディーの癖にやりすぎじゃないですか感溢れるこの大作の本人によるレビューが遂に公開!

 

 

DISK 1 【rain】 side

 

 

track1 『神殿 -prologue-』
作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲は【rain】で描かれている世界への入口と云うニュアンスで描きました。終始流れている雨の音はシンセ等の音源ではなく本物で、自宅のエントランスにコンデンサーマイクを立ててPCで録りました。同じ建物の方が帰宅する度、かなり怪しまれましたが、その甲斐あってリアルな音が録れました。シンプルで味気ないインストですが、【rain】と云う世界を象徴する儚さがあって、個人的に気に入っている曲です。

 

 

track2『忘らるる都』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

「FF」に詳しい方ならタイトルでピンときたかも知れませんが、包み隠さず云うと、まぁ、あの街です(笑)。この【rain】は「神秘的な場所、世界」(例えば軍艦島の様な)をイメージしたアルバムなのですが、自分の中で神秘的な場所って何処だ?と考えた時に真っ先に出てきたのが「忘らるる都」でした。思えばこのアルバムで云う処の「神殿」もまた、この街のイメージなんだと思います。自身の曲としてはかなりポップな部類に入るので、冒頭に持ってくるのはどうかなぁと悩みましたが、歌詞的にlucy+peter=esolagotoと云う歌リストの活動コンセプトが含まれていたり、「迷い込む」情景が伝わり易く描かれているので、最終的にこの位置に収まりました。

 

 

track3『総てを赦して、燃える』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲は実は結構古い曲で、展開と云う展開もなく、ツクリテとしてはパッとしない印象が強かったんですが、ルーマニアの皆様にはすこぶる人気なので、多分良い曲なんだと思います(笑)。そう云えば、独奏単独公演でアルバムのトレーラーを公開した時も一番反響が大きかったですね。確か【masquerade】とかその辺の音源を製作していた時に、兎に角色々な事に切羽詰まってしまって、気分転換に海に行った時に出来た曲だと記憶しています。その時に見た夕陽があまりにも大きくて、あまりにも真っ赤で。自分や自分が抱えてた悩みなんかはほんとちっぽけで、総て燃やされてしまいましたね。この、よく解んないタイトルはそこから由来しています。因みに、SEで波の音が入ってますが、これは改めてその海を訪れた時に簡易レコーダーで録音したものです。全然どうでも良い情報ですが、イントロを大音量でよく聴くと、ビキニギャルの黄色い声が入っています。

 

 

track4 『ホーリー』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲は特に男子に指示される曲ですね。愛や恋とは違う、憧れに近い感覚を描きました。例えば毎日同じ時間に電車に乗っていると、「あ、あのイケメン今日もいる」みたいな事ってあるじゃないですか。ありますよね。ある。だけど、別に恋人になりたいとかそう云う感覚ではなく、「今日も見れたラッキー」ぐらいのテンション、みたいな、なんかそう云う軟派な曲なんですよ兎に角。だから「君を知る必要はない」のです。

 

 

track5『手紙』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲は、とある旧友との酒の席で聞いたあまりにも切ない別れ話を元に描かれた曲です。あまり詳しくは書けませんが、人間はいつ何処で何があるか解らないので、伝えるべき事は伝えておきましょう、と云っておきます。

 

 

track6 『rem』
作詞: ピーター1号
作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲は、時々ピアノで共演してくれるピーター1号の作詞による曲です。彼女の描く歌詞は言葉が洗練されていて、とても面白い表現が多いのです。不思議な世界にトリップしてしまう様な。一行一行を矯めつ眇めつすると、本当に難解なんですが(笑)、まるっと一曲聴くと嗚呼、なんか良いってなるんです。この曲は【re:twilight soundtrack】発売時に初回特典として配った事があるんですが、その時のクレジットは「rem(demo)」にしたんです。こう云う風に、ちゃんとした作品の中に留めたい曲だと思ったので…。以前の歌詞だと「雨」と云う【rain】収録曲の必須ワードがなかったので、ピーター1号に御願いしてちょっと修正して貰ったのです。余談ですがa paindyneでもお馴染みの「quasar」も、ピーター1号による作詞です。

 

 

track7『彼ノ丘ニテ』feat.今泉沙友里
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲はtwitterで回ってきたリツイイトからインスパイアされて描いた曲です。確か「J-POPにありがちな歌詞」みたいなツイイトで、「君を待ちすぎ」「もう一人じゃなさすぎ」等面白い「~すぎ」が色々綴られていたのですが、その中で一個だけ、まだ使った事がない奴があったんですよ。それが「あの丘で待ちすぎ」(笑)。キッカケはそんなくだらない事だったのですが、曲自体は凄く格好良く出来たなぁと自負しています。実はこの曲、気付いた方もいるかも知れませんが、「世界が終わる夜」の後の世界なんです。「僕」は生きていて、居なくなってしまった「君」を探しに行く、と云う。で、どうしても男女コーラスにしたくて、友人ミュージシャンである今泉沙友里さんに御願いして唄って貰ったんですよ。これがまた、大当たりでした。さゆりんさんの曲には、こう云うテイストの曲は少ないと思うんですが、いざレコーディングってなった時にこれがまたサクサク録れて「あ、このひとめっちゃ器用!」と驚きました。上手いのは勿論知っていましたが、他人の曲をここまで消化して唄えるって凄いです。自分の譜割りって結構クセあると思うんですが、ハモらせてもピッタリで。愛を感じましたね(笑)。また、当時全開でそいそい云ってた自分と、シュールな小芝居にも定評があるさゆりんさんが、まさかのど・バラードを唄っているってのが面白かったですね。さゆりんさんの歌を録った後、新宿で呑みに行って、終電逃しそうになりダッシュしたのも今や良い思い出です(笑)。その時下りの小田急で寝ちゃったんですが、車掌さんのアナウンスで目を覚ましたんですよ。「彼ノ丘です」って聴こえて。新百合ケ丘でしたね。危うく降りるとこでした。

 

 

track8『水無月に消ゆ』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲は博毅さん主催の「梅雨に向かって唄おう」と云うイベントの時に描き下ろした曲です。基本的に夏や梅雨って大嫌いなんですが、雨の日にベッドに蹲って暗い音楽を聴きながらうとうとするあの感覚は大好きで、そんな鬱々とした気持ちを曲にしました。因みに昔は「休日=雨」と云っても過言ではないくらい雨男でした(よく「雨男」をステータスの様に語るひとが居ますがそんな「なんちゃって」とは比べ物にならないレベルの雨男でした。例えば、コンビニに行くとか、そう云う
時は別に降らないんですが、絶対に今日だけは晴れてくれ!って時は必ず雨で、しかもよりによってそう云う日の一番重要な瞬間だけ土砂降りになるんです。両手に機材持ってる移動中とか。兎に角ピンポイントなんです。一時期は御客様の間でも「今日ルーシーライブだから降る」みたいなジンクスが当たり前の様にありました)この曲の主体になってるアルペジオの最初のコード、実はパクリなんです(笑)。パクリって云うか、RADIOHEADのブートライブCDで、「曲と曲の間でなんとなく鳴らされた感のあるコード」を拾ったんです。個人的に世界で一番美しいギターの和音に感じて、いつかこのコードから始まる雨の曲を描こう、と思ってたんです。途中変拍子なんかも入れ込んでいるんですが、あれは不規則に屋根を叩く雨の音を表現したかったのです。余談ですが、雨の日の休日にベッドで聴く御勧めのCDはnine inch nailsの「still」(或いは「and all that could have been limited edition disc2」、内容は同じで此方の方が入手し易い)と云うアルバムです。良かったら是非試してみて下さい。

 

 

track9 『神殿 -epilogue-』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

【rain】を締め括る、7分を超える大曲です。ひたすら、淡々と、じわじわと展開していく曲ですが、シンプルなコード感の中で叙情的なメロディが創れたかなと自負しています。演奏会では御馴染みの、「looperをオン→ギター内部のコンデンサーマイクに鉄筋の音を入力→looperをオフって再生→リバースディレイを掛ける」あのパフォーマンスも録音しました。肝心の歌詞ですが、「神殿 -prologue-」で【rain】の世界に迷い込んでしまった「あなた」が現実の世界へ戻ってしまう、と云うコンセプトで描かれています。冒頭の「すべてを忘れた」と云うのは、どんな居心地の良い夢であっても、ほんの少し時間が経つとすっかり忘れてしまう、あの感じのイメージです。終盤のバンドインではドロップCチューニングでまさかのゴリゴリサウンドになりますが、個人的にスローで悲壮感漂うバラードにはヘビーなアプローチはとても合うと思っていて。聴いてきたラウドロックの影響だと思うんですが、五月蝿くやかましい中にこそ壮大な哀しみを表現出来ると思うのです。ディストーションが鳴り止んだ後、「あなた」が帰ってしまった虚無感とある種の達成感に満たされて、この【rain】と云う世界の幕を閉じるのです。

 

 

 

DISK 2【ruin】 side

 

 

track1 『花魁 -白百合ノ舞-』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

定番となりつつある「花魁シリーズ」の原点的な曲です。【rain】同様、冒頭はそのアルバムを象徴する様な楽曲にしたく、この曲を1曲目にしました。和の音階を意識したリフを主軸に、雄叫びのみで構成された所謂メタルコア的な曲です。ソロアルバムでコレかよ、と云う意見を多数頂きましたが、やっぱぺではやっちゃいけない気がするんですよ、こう云うのは(笑)。プレーン(?)の「花魁」に「狂い咲いた白百合の舞をあのひとへ捧ぐ」と云う歌詞がありますが、この曲がまさにそれです。今聴いても、普通に格好良いと思います。

 

track2『merry go round syndrome』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto
タイトル:miu

 

【ruin】は基本的に「破壊」だとか「廃墟」だとか、兎に角退廃をイメージする色んな意味を持つ言葉なのですが、この曲は完全に「破壊」をイメージされて描かれています。身近にむっちゃ我儘なひとって必ず居ると思うんですが、ざっくり云っちゃうとそんなひとを皮肉った曲です(笑)。間奏の、ギターソロの後ろで「はい!はい!」って掛け声が入ってますが、あれ、溝口12bunchでの単独公演をやった時にステージにマイクとPC置いて、「絵空事讃歌」の間奏中に御客様やスタッフさんに協力してやってもらったんです。ある意味ライブレコーディングですね(笑)。そんでエンドロールで「rain&ruin」のトレーラー流した後に「さっきの『はい!』も入ります」みたいに発表して。だから歌詞カードのクレジットには皆の名前(許可を得たひとだけなので、実際にはもっと沢山のひとの声が入っています)が載っているのです。因みにタイトルは、twitterで友達のmiuちゃんが「メリーゴーラウンド症候群」て言葉を呟いてて、たしかぐるぐる同じ処を廻る(=何度も同じ事を繰り返す)的な意味合いだったと思うんですが、「これだ!」って思って許可を貰って拝借させて頂きました。miuちゃん有難う。

 

 

track3『violet』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲は自分の大好きな漫画家である熊倉裕一先生の「king of bandit JING(a.k.a王ドロボウJING)」と云う作品に登場するヴィオレットと云うキャラクターをモチーフに描いた曲です。恋人との待ち合わせに使っていた村の風車が火事になり、ヴィオレットはその炎の中で死んでしまい、恋人は激しく苦悩し記憶に捕らわれてしまう、みたいな哀しいストーリーなのです。ここで全部描いてしまっても構わないのですが、是非皆様に熊倉裕一先生の世界を知って頂きたいので、作品を読んで、と云っておきます。因みに、自身の曲で「masquerade」と云う曲があるのですが、実はあれも「king of bandit JING」インスパイアです。

 

 

track4『花魁 -死神ノ鎌-』

作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

遂に平成迄来てしまった花魁シリーズです(笑)。厳密に云うと「花魁 -時計草-」も平成なのですが…この曲は「時計草」の一歩手前に位置します。「花魁 -白百合ノ舞-」→「花魁(プレーン)」→
「花魁 -昭和、東京-」→「花魁 -死神ノ鎌-」→「花魁 -時計草-」と云うのが正しい時系列です。この「死神ノ鎌」では今までの花魁にはなかったナウい描写とナウいアレンジが成されています。特に生々しい歌詞に注目して頂けると幸いです(もっとも自分が御風俗等に御世話になった事があればもっとリアルな歌詞に成り得たかも知れませんが(笑))。途中ドラムがシンバルを叩きながらスネアを連打すると云う神業が見受けられると思いますが、わざとですので。ほんと、ミスとかじゃないので。

 

track5 『terrorist in the risingsun』

作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲は、なんと高校時代に描いた曲で、アレンジは変われど未だに原型を留めていると云う数少ない曲です。知る人ぞ知るghostbabyでも演っていました。今だから云えるのですが、9.11のテロ事件が勃発した時に描いた曲で不謹慎ながら「テロリスト目線ではどうだったのか」と云うイメージで歌詞を描きました。家族が居たとして、その殉死に賛同しているのか、とか、兎に角色々想像しながら描きました。全英詞ですが、帰国子女の方とかには是非見て頂きたくない拙さっぷりとなっています。

 

 

track6 『song to ruin』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

こう云う、もうなんか曲って云うよりもリフ、みたいなのずっとやりたかったんですよ。原曲、と云うのは無く、打ち込みのドラムに合わせてドロップAまでチューニングを下げたギターで遊んでたら出来たんです(笑)。でもうほんとテキトーにそれっぽい歌詞を乗っけて叫んでみました的な。いつか演奏会でやってみたいですね。このコールアンドレスポンスは絶対気持ち良いですよね…!

 

 

track7『アヤメ』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

人気曲「dance with the ghost」の続編となる曲です。タイトルは自らを殺め、孤独に震える愛するひと(幽霊)を抱き締める為同じ存在になる、と云う処から由来しています(アヤメ=殺め)。ピアノを主軸に、硬質なリズム隊が無機質なグルーブを奏でていく、如何にも自分らしいアレンジになったと思います。最後のピアノソロの後ろで、ポルターガイスト音が入っているのですが、このアルバムの録音で一番楽しかったのがこれです(笑)。独奏ではピアノより変則チューニングを施したギターの弾き語りで演奏する事の方が多いです。因みに花のアヤメには「信じる者の幸福」「消息」と云う花言葉があります。

 

 

track8『unstable』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲のリフは、実は10年位前からあったんですが、今回のアルバム製作中ようやく完成に至りました。6/8拍子のヘビーリフは最高に好きなんです。なんでか昔から。これもドロップC迄チューニングを下げてるんですが、そのヘビーさの中に甘ったるいメロディを乗せてUK色を出すよう努めました。歌詞は、ラブソングに見えて、割と愚痴ソングと云うか(笑)。「わかんない奴だな!お前は!」みたいな感じです。最近は独奏で極端に静かなアレンジにして唄っております。

 

 

track9『lateshow』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲は、兎に角短く、所謂サビ的な処が一回しか出てこない「aurora」「アヤメ」と同じニュアンスの曲です。以前レイトショーのみで公開されていたロシアの映画監督の短く淋しい作品を見て感動した事があり、「こんな曲が描きたい」と思った事がキッカケで出来た曲です。初めて演奏したのはまさかの日比谷野外音楽堂の青空の下で、「うわぁミスマッチ」と思ったのを憶えています。

 

 

secret track 『世界が終わる夜』
作詞・作曲: lucy+peter=esolagoto

 

この曲が入っている事、皆様御気付きになったでしょうか…ぺのバージョンと比べると遅く、重く、やたら引っ張るアレンジになっていますが、意外とこっちの方が「原曲的」なアレンジだと思います。【ruin】と云うアルバムを創るにあたり、どうしてもこの曲を入れたくて。こんなに「破壊」であり「廃墟」そのものである曲を外す手はないなと。只、ぺも「moonscape」をリリースしたばかりだったので「また世界が終わる夜?」みたいになっちゃうかなと思い、最後まで根気良く(笑)聴いてくれたひとにのみ気付ける様にクレジットには記載せず、トラックも分けないで「lateshow」の一分後に始まる『本当のレイトショー』として収録しました。地響きの様に轟くドロップDチューニングのヘビーリフが嫌って程続き、最後には「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」っと来てバツッと切れる…我ながら見事な世界の終わりを表現出来たと自負しています。尚、自分はチャットモンチーの「世界が終わる夜に」をまったく知らなかった事と、SEKAI NO OWARIのファンではないことをここに表明しておきます(笑)。



 

2014年9月15日

lucy+peter=esolagoto